第32回大阪府理学療法学術大会の開催報告について
令和3年1月13日
大会長 中川法一
第32回大阪府理学療法学術大会 開催報告書
第32回大阪府理学療法学術大会は令和2年9月13日(日)に大阪府理学療法学術大会では初のオンライン学会として開催し、大きなトラブルもなく成功裏に開催できました。計画当初の本大会は7月の開催予定で準備を進めておりましたが、COVID-19の全国的な感染拡大に配慮し9月へと開催時期を延期し、さらに未体験のオンラインでの開催を決断いたしました。この時点で、オンライン学会は全国的にも前例が少なく、情報収集もままならない状況での準備から当日の運営まで、全てが初の試みであり貴重な経験となりました。まさに雲を掴むような事の繰り返しでしたが、都留準備委員長の強いリーダーシップのもとで準備委員会メンバーの献身的な働きと府士会および生涯学習センターの各位、協賛企業の皆さま等々のご理解ご協力の下で無事に開催できましたことを書中をお借りし衷心より感謝を申しあげます。
本大会の目的はテーマを「キャリアラダーとゴール」とし、若手理学療法士の育成過程で重要な要素である多様な対応が可能である理学療法士としての能力開発をラダーに示すことでした。すなわち、免許取得後早期の段階から専門分野に偏重するのではなく、広い視野で多種多様な障害像に対応できる力を養うべきであるということを本大会の理念に据え、ジェネラリストとしての能力育成の道標を示せるように、講演から一般演題発表およびシンポジウムまで一貫した方針での企画を練りました。
特別講演では、「細胞の作られ方とその利用」と題して仲野徹先生(大阪大学大学院 教授)に細胞というミクロから人の生活というマクロに繋がる視点や、再生医療とリハビリテーションについての示唆をいただき、理学療法士が細胞レベルから機能を考え生活をデザインしていく重要性を考える機会をいただきました。また教育講演では、熊﨑大輔先生(府士会長)に府士会における次世代のために展望をお話しいただき、人材育成についての大きな方向性を共有いたしました。
学会の骨幹部をなします、一般演題では前述しました企画目的を達成するために、「症例報告(症例研究)」に焦点を当てて研究成果を募りました。企画と広報担当の準備委員の尽力で、全演題数の約70%(111演題/156演題)を「症例検討」でエントリーをいただいたのは企画運営側として狙い通りの結果でした。さらに、口述発表の全てのセッションを症例検討に割り振るという大胆な企画にしました。またセッション区分も、従来の臓器別領域分類(神経筋障害、運動器障害、内部障害等)とあえてせずに「病期」という点に着目し「急性期・回復期・生活期」として、同一セッション内(同一病期)で多様な疾患・障害像を議論および聴講ができるような工夫を行いました。この企画によりディスカッションが活発に行われ、従来の臓器別領域分類で行われるものとは違う、広い視点での意見交換が活発に行われ、発表者からも非常に好評価を得ました。
これに相応するように、同様に病期という点に着目し「急性期」「回復期」「生活期」に加え「災害時」という4つの視点で理学療法士のあり方を考えるシンポジウムを行いました。病期別シンポジウムでは、共通の討議課題を“歩行”として「歩行へのアプローチと目標設定」というテーマで各期においてのシンポジウムを行っていただき、 “歩行”という永遠の課題に対して若手理学療法士に知識や考え方の幅を広げる場が提供できたと思っています。並行して行われた災害時リハビリテーションのシンポジウムでは、最近のトピックスである理学療法士による災害時支援に関する情報提供を行っていただき、災害時での活動に、会員の意識高揚がなされる討議を行っていただきました。
冒頭に報告しましたように、本大会は史上初のオンライン開催となりましたので、講演、シンポジウムなど学会終了後も全てオンデマンドでの聴講を可能とし、ポスター発表会場も公開を継続しました。この効果は絶大であり、学会終了後も大会ホームページへのアクセスが絶えず、ポスター会場では活発な意見交換が継続されました。また、他士会からの参加者が200名を超え、全国から本大会に対して称賛の声をいただけたのもオンライン特性だと言えます。一方で学校教育が中断している中で、教員などからの働きかけがなかった影響で学生の参加数が例年に比べて激減しておりましたが、これはオンラインの弊害というより教育現場をはじめとした社会の緊急時体制の影響だと推察しています。大会長の唐突な決断によりオンライン開催へと大きく舵をとりましたが、準備委員会はこの苦境に決して萎えることなく、オンラインの特性を活かすという発想に切り替えて粛々と作業を進める姿に感動すら覚えました。初めて遭遇する様々な事態を経験し、また臨機応変に課題解決を行えたことで、結果的に準備委員の報酬系に大きな刺激を与えたようで、胸を撫で下ろしております。
最後に数字で見る大会結果について報告をさせていただきます。演題発表は過去最多の163演題の応募がありました。厳選かつ教育的な要素を加えた査読を経て、156題を採択しました。内訳は口述発表16演題、ポスター発表が140演題であり、採択率は95.7%となります。
参加者数ですが、オンライン開催のため事前登録のみとし、事前参加登録数は1,005名(会員769名、他府県士会214名、学生19名、他職種3名)でした。協賛企業は7企業にご協力をいただきました。オンライン会場へのアクセス統計ですが、総アクセス数177,364であり、学会当日はアクセスユーザー数2,634名、アクセス数は112,259でした。
以上をもって第32回大阪府理学療法学術大会の報告とさせていただきます。