診療参加型臨床実習 用語説明
昨今、開催されている研修会等で「教育についての専門的な用語がよくわからない」というご意見を耳にします。そこで、教育に関する用語等を本マニュアルと「臨床実習教育の手引き(第6版)」の内容を中心にピックアップしたものを紹介します。
- ブルームの教育目標分類学
ブルームによって開発された教育目標の分類学。具体的には教育目標を「あたま(認知領域)、こころ(情意領域)、からだ(精神運動領域)」 の3領域に分けられています。 認知領域は知識、情意領域は態度や習慣、精神運動領域は技能を示します。
- 診断的評価(実習前評価)
養成校が行う評価で実習生に臨床実習に臨む適性や能力があるか否かを判断するための実習前評価です。 認知領域についてはCBT、情意領域・精神運動領域についてはOSCEなどを指します。
※CBT:Computer Based Testing※OSCE:Objective Structured Clinical Examination
- 形成的評価
CEが行う学習促進のための評価で学習状況(成長具合)の確認を日々繰り返し、学習にフィードバックします。スキル修得のためのアドバイスやヒントは、この評価が適切でないと行えません。
参考:Norcini J, Burch V. Workplace based assessment as an educational tool: AMEE Guide No. 31. Med Teach Nov 29(9).2007; 855-871.
- 総括的評価
養成校が行う評価で学習がどの程度達成されたかを評価するもので実習後に行う評価です。
- 正統的周辺参加
最初は「周辺的」な位置から、徐々に「中心的」な役割を果たすようになっていくアイデンティティの形成過程を「学習」と捉える学習理論です。
参考:Lave J, Wenger E. Situated Learning: Legitimate peripheral participation.
- 認知的徒弟制
伝統的な親方と弟子の徒弟制に見られる見習いの修行過程を、認知的に理論化した教育手法で弟子(部下)が親方(上司)の仕事のやり方を見よう見まねで実践することから始め、最終的に自分で判断しながら仕事ができるようになる方法として、企業のOJT指導などにも活用されています。認知的徒弟制は、以下の7つのステップで実践されます。
- モデリング (modeling)
- コーチング (coaching)
- スキャフォールディング (scaffolding)
- フェーディング (fading)
- アーティキュレーション(articulation)
- リフレクション(reflection)
- エクスプロレーション(exploration)
実習生がCEの様子を観察し、課題達成のために必要なプロセスの概念モデルを構築する段階
レベルに合った課題を与え、実習生を観察し、ヒントや助言を与える段階
実習生が独り立ちするための「足場かけ」として、CEはできないことにだけヒントを与え、あとは一人でできるよう自立を促す段階
習熟度に従って段階的にヒントを減らし、最終的に足場を外して独り立ちさせる段階
実習生が学んだ知識や技術を言語化させ、学びを確実なものにする段階
実習生が、これまでの学習を振り返る(内省する)段階
実習生が独り立ちして課題の遂行が可能で、課題解決の過程が確立してくる段階
参考:Collins, A., Brown, J.S., & Newman, S.E. Cognitive apprenticeship: Teaching the crafts of reading, writing, and mathematics.
※運動スキルの教育は 1~4 のステップで実践されます。一方で、認知スキルの教育には 5~7 のステップも必要となります。